理工学部メカトロニクス工学科×企業
企業との共同研究で
社会に役立つロボットをつくる
理工学部のメカトロニクス工学科でロボットの研究開発をしている大原賢一准教授。様々な機関や企業と連携し、世の中の役に立つロボットをつくり出している。2017年4月には大学院理工学研究科メカトロニクス工学専攻も新設され、ますます注目が集まる名城大学のロボット開発について、大原准教授に話を聞いた。また、毎年ロボットコンテストに学生を送り出す大原准教授、その狙いについても伺った。(取材日 2017年3月30日)
ロボット開発について学ぶ研究室
メカトロニクス工学科の「メカトロニクス」とは、機械のメカニックと電気のエレクトニクスをかけた造語です。一般的には聞きなれないかもしれませんが、ものづくりの現場ではなじみのある言葉です。機械工学や電子工学、電気電子情報工学などと呼ばれる工学系の分野を幅広く網羅し、機械、電気、情報、制御などが融合した領域を扱う技術や学問を意味しています。
その中でも私の研究室は、ロボットシステムデザインといって、ロボットのハードウェアとソフトウェアをどのように組み合わせるとロボットがより動きやすい環境になるかなど、複雑なロボットシステム全体を俯瞰で捉え、システムを構築し、汎用性が高く知能的なロボットをつくる研究をしています。
学生全員がプロジェクトに参加
私の研究室ではすべての学生に、学外の機関や企業と連携したプロジェクトを担当してもらうことにしています。現在進行しているミサワホーム総合研究所とのプロジェクトでは、住宅のロボット化をテーマに、多様な機能を持つパネル型のデバイスをつくって発表しました。このパネルには電化製品や照明などを組み込むことができ、レゴブロックにようにパネルを組み立てて部屋や家をつくることができます。展示会に出展したところ反響があり、今後はこのパネルを使ってカプセルホテルみたいなものをつくって、実験的に使ってもらう試みをしようといった案も出ています。
ほかにも、国立の研究所と一緒にロボットの研究開発をしたり、他大学の医学部と組んで内視鏡検査のためのロボットシステムの開発をしたりと、幅広い業種や機関と組んだ共同研究プロジェクトを学生と一緒に行っています。
共同研究は学生が社会を知る機会
ミサワホーム総合研究所との共同研究では、学生に展示会の現場に立ってもらいましたが、そうすると世の中の人が自分たちの研究に対してどういった反応をするのか、その生の声を聞けるわけです。参加した学生はすごくいい経験をしたと言っていますし、この経験をきっかけに、大学院へ進学したいという考えに変わった学生もいますので、いい機会を提供できたかなと思います。
共同研究では企業の方と学生が一緒にブレストをしたり、プレゼンテーションを行う場面もあります。ほとんどの学生はそういう場に慣れていないので、最初はあまりうまくできないのですが、場に慣れて、どんな感じでやればいいのか分かってくると、学生からもそれなりに意見が出てきます。社会に出ると研究職でもコミュニケーションスキルが求められるので、そういった経験を積むことも大切だと思います。
また、私も研究者としての時間が長いので、ある意味凝り固まった考え方をしてしまう部分があるんですが、そこに学生のフレッシュで柔軟なアイデアを取り入れと、そのシナジーで何か新しいものが生まれるんじゃないかという期待もあります。
ロボット技術を用いた社会貢献
ロボットの研究開発においては、「使って喜んでくれるユーザーがいること」「社会の役に立つ技術であること」を大切にしています。ですから、人型ロボットでも会話をするだけとか、人間のような動きをするといったことよりは、人の代わりに何かを掴んで運んだり、作業をすることができるロボットをつくって、ロボットを積極的に活用することに重きをおいています。
その考えの根底には、「エンジニアはつくったものを世の中の人に使ってもらえてなんぼ」という、私が学生のころの指導教員の言葉があります。
最先端の誰もやっていない研究を行うことはもちろん重要ですが、それと同時に今実現できる技術を求めている人に対して、事例を提示し、それを製品につなげて行くことも同じくらい重要と考えています。そのため、使ってくれる人、それに期待してくれている人の期待に応え,よりよい社会にするために工学の立場から貢献するために、企業との共同研究を積極的に行っています。
ものづくりの楽しみを知ってほしい
学生たちには毎年ロボットコンテストへの参加を呼びかけています。私自身が学生時代に目標を持てずにいたときに、マイクロマウスのコンテストに参加して熱中した経験があり、学生にもコンテストを通して、ものづくりの楽しさを味わってほしいと思っています。自分が考えたものが思い通りに動くってすごく楽しいですし、研究へのモチベーションが高まります。その楽しみを知ったうえで社会に出ていってほしいんです。
学生を見ていると、自分たちがやってきた学問や共同研究プロジェクト、コンテストへの参加といった活動を特別なことだと思っていないところもありますが、全国的に見て私たちは幅広く特色のある授業をしていて、それを経験した学生たちは充分に価値があると思います。ですから、私の研究室でものづくりの楽しさを知って、自信を持ってこれからの道を進んでいってほしいですね。