名古屋市東区×名城大学

地域は人間活動のプラットフォーム
学生が成長できるシーンに溢れています

名城大学とナゴヤドーム前キャンパスがある名古屋市東区は、2015年に「連携・協力に関する協定」を締結し、官学連携による様々なプロジェクトに取り組んできた。地域に開かれた大学を目指す名城大学と、協定をまちの魅力づくりに生かしたいと考える東区の取り組みや関係性はいかに? 行政側の担当者である東区区役所の宮島葉子さんと田中雅隆さんに、協定締結の経緯や、活動内容、今後の展望についてなどを伺った。

キャンパス開設に向けて 結んだ連携協定

宮島:東区と名城大学は「連携・協力に関する協定」を結んでいます。2016年4月にナゴヤドーム前キャンパスが開設されることを受けて、まちづくりや防災、文化、福祉などの面で地域と学生が協力し、地域の発展と学生の社会での実践力を高めていくことが協定の目的です。
田中:キャンパスのオープン前でしたが、2015年10月14日に調印式を区役所で行いました。そして、10月19日に実施した「区民まつり」では、さっそく名城大学の学生に参加してもらい、農学部が商品化した飲む酢「華名城(はなのしろ)」をPRしていただきました。翌11月には、「歩こう! 文化のみち」というイベントがあり、外国語学部の学生に、町並み保存地区「文化のみち」を訪れた外国人のガイドしてもらうなど、地域活動へ積極参加してもらうことになりました。

大学生が地域を盛り上げる原動力に

宮島:東区は通信制高校を合わせて9つの高校や専門学校などがある、名古屋屈指の文教エリアです。これまでも「東区まちづくり 元気サポーター制度」などを作って、学校との連携を図ってきましたが、主に高校生を中心とした活動でした。一昨年からは名城大学の学生に参加してもらうようになり、地域の大人と大学生、高校生、中学生が一緒にまちづくりについて考えるグループ討論「フューチャーセッション」なども行いました。幅広い世代が集まって、未来の東区について、夢が膨らむような意見がたくさん出て盛り上がりました。
田中:「フューチャーセッション」では、東区の特長と名城大学の強みを挙げて、それらをキーワードに、これからの東区のまちづくりについてグループに分かれて提案をしてもらったんです。いろんな世代層が集まる討論会は、参加した学生も面白かったと思います。

宮島:元々は高校生を中心とした活動でしたが、大学生が入ると、またちょっと違った新しいものができるのかなという希望が見えました。名城大学の学生が地域の高校生や中学生を引っ張っていくような、リーダー的存在になってくれたら嬉しいですね。
宮島:昨年度は、キャンパスに隣接する砂田橋学区内の活動に参加してもらったことも、意義があったと思います。砂田橋学区は団地が多く、地域コミュニティの希薄さが課題となっていますが、昨年初めて学区の盆踊りを開催することになり、名城大学のモダンジャズ研究会の学生にステージを担当してもらいました。音がするものですから、地域の方々も「何をやっているんだろう?」という感じで、多くの方が盆踊りに顔を出してくれました。
田中:砂田橋学区の隣の矢田学区は、矢田川が流れていていることもあって、防災への関心が非常に高いエリアです。帰宅困難者が発生するような交通規制が敷かれた場合に、名城大学やイオンモールナゴヤドーム前で、受け入れをやっていくという話もあって、防災の面でも地域から期待をされています。

総合大学の幅広い専門性を生かす

田中:大学が持っているテクノロジーが地域の課題を解決するってこともありますよね。特に福祉の面では、IT技術などで、体に障害のある方や高齢者の手助けをしたり、介護ロボットが高齢者をサポートしたりすることも将来的には考えられます。名城大学は総合大学で、理工学部や人間学部、薬学部などがありますので、福祉の分野でも何か面白いことができたらと思っています。
宮島:現在ナゴヤドーム前キャンパスに設置されているのは外国語学部のみですが、来年度には人間学部と都市情報学部が移転してきます。それぞれの専門性を生かして、福祉や都市政策の面でより連携をしていきたいですね。
田中:学部の移転に伴って、ナゴヤドーム前キャンパスの学部学生の数は130人ほどから2000人規模へと拡大するので、今から楽しみです。また、名城大学との連携協定は包括連携といって、全学部に及ぶものとなっています。他のキャンパスに設置されている学部も理系、文系と多岐にわたるので、総合大学ならではの様々な知恵を集結できたらいいですね。

地域は成長の場 学生は伸び伸び活動を

田中:協定書の文言には、「学生の成長につなげる」という連携の理念が入っていて、これは私たちが常に考えていることです。地域と関わるというのは、学生にとって社会と関わることであって、経験してみないと分からないがたくさんあります。挨拶や礼儀、マナー、コミュニケーションなど、社会に出て必要なことを学ぶ場にしてもらいたいですね。学生なんだから失敗してもいいんです。たくさんのことを経験して、失敗から学んで成長していってほしいと思います。
宮島:地域というのは生活の基盤ですよね。大人になってからも地域活動には関わっていくことになると思うんですけど、そういった関わりを持って、自分ごとだけではなくて、地域の中でどう振る舞い、人間としての幅を広げていくかのかということを、今から学んでもらえたら、人生はきっと豊かになります。
田中:自分のキャリアアップのための学びなら企業連携だけでいいかもしれませんが、地域活動はそういうものではありません。人のため、地域のために、みんなの課題に自主的に取り組んでいき、そこから人とのつながりが生まれて、心が豊かになったり、人の幅が広がるんです。ですから、地域でちゃんとやれる人は、どこにいっても活躍できる人だと思っています。

区政110周年に向けての期待と課題

宮島:平成30年に東区は区政110周年を迎えます。そこで、周年イヤーには東区の歴史や伝統文化を紹介できるようなイベントを実施したいと考えています。名古屋で一番古い山車をはじめ5つの山車、尾張徳川家の菩提寺である建中寺、町並み保存地区「文化のみち」など、東区には歴史的、文化的遺産がたくさんあります。学生にも自分たちのキャンパスがある東区のことをもっと知ってもらって、イベントの運営やPRに関わってもらえたらと思っています。
田中:義務ではなくて、本当にやりたい学生に手を上げてもらえたらいいなと。東区は歴史や文化が色濃いエリアですが、認知においては、遅れをとっているというか、あまり知られていないように感じます。東区の魅力をもっと名古屋の人や外国人などに知ってもらいたいんです。学生が自分たちの視点で、様々なツールや表現方法を使って、楽しみながら東区の魅力をアピールしてくれたらいいですね。