有松プロジェクト

理工学研究科 建築学専攻
大学院1年生 加藤大誠

犬山プロジェクト

理工学研究科 建築学専攻
大学院1年生 川端一輝

理工学部 建築学科
3年生 川村隼弥

理工学部 建築学科
3年生 小島実希

※学年、取材日時点(2017年3月)

有松・犬山×建築学生

若者、バカ者、よそ者の
僕たちがまちを変えていく

建築を学ぶ学生たちが数年に渡って取り組んでいる有松プロジェクトと犬山プロジェクト。有松絞りという伝統産業があり、重要伝統的建造物群保存地区にも選ばれている有松と、城下町として栄え、江戸の風情を今なお残す犬山。それぞれの地域の特性を生かし、地元の人と関わりながら、都市や空間、建築の側面からアプローチして地方再生のプロジェクトに挑む学生たち。その活動について話を聞いた。(取材日2017年3月30日)

有松、犬山それぞれのプロジェクト

加藤:有松プロジェクトは服部邸という古い町屋を、大学施設として活用しようという話があり、まずは服部邸の塀を、有松の伝統的な板塀に改修することからスタートしました。有松の板塀は、基礎の石積みの上に木の塀が建つスタイルで、服部邸の塀も庭にあった石を掘り起こして積み上げることで、家が持つ歴史と有松のスタイルを踏襲しました。その後、服部邸で研究室のゼミを行ったり、有松絞りのワークショップをしたりと活動していく中で、プロジェクトがいろんなところへ派生していきました。
川端:犬山プロジェクトは参道の賑わいから道一本隔てた南側にある、コンクリート造り3階建ての「防災ビル」という建物を、リノベーションで蘇らせることがテーマです。防災ビルは50年ほど前に長屋や町屋の延焼を防ぐために各地に建てられたもので、当時は賑わいましたが、今では空き室が多くなっています。壁を隣同士で共有する共同建築になっていて簡単に取り壊すこともできないため、ビルを生かして、再び人が集まる場所にしようという試みです。

地元のコミュニティが広がる有松

加藤:服部邸で行った有松絞りのワークショップを手伝ってくれた地元の方から、歴史ある銭湯を有松絞りのアトリエとして再生したいという話を聞き、僕たちが基本設計をさせてもらうことになりました。工夫をしたのは天井に絞りを掛けるレールをつくること。絞りが天井から垂れる風景が窓から切り取られて、まちを歩く人たちにも見える設計になっています。
また、熊本に「みずあかり」という祭りがあるのですが、熊本地震の際に祭りのコミュニティがいかされたという話を聞き、それをモデルに、有松で竹筒の灯りでライトアップする「竹あかり」というイベントも行いました。
また、現在は有松の竹で柵をつくる活動をしています。有松の街道沿いに進入禁止などを示すカラーコーンが立っているんですが、それを景観に調和する竹柵に置き換るプロジェクトです。この竹柵は、有松に限らず歴史的景観を持つ都市などで使ってもらえるよう、ウェブ上でつくり方を公開していく予定です。

防災ビルのリノベーション案が完成


川端
:犬山の防災ビルをリノベーションするにあたって、まずは、地元の方の意見を聞きたいと思い、「犬山クラス会」という勉強会を発足しました。地元の方とも話したうえで、やはり防災ビルをまちのお荷物と考えるのではなく、もうちょっと人が集まる場所にしたいと考え、ビルに吹き抜けや廊下、屋上など、回遊できる「たまり」空間をつくり、ビルを緑化することなどを盛り込んだ、リノベーション計画をまとめ、展示会や交流会を行いました。現在犬山プロジェクトは、リノベーションにはいたっていませんが、犬山を流れる木曽川の上流にある長野県木祖村との木曽川上下流交流に発展していて、木祖村のヒノキを使ったベンチを防災ビルに仮設で設置するなど、新たな取り組みもしています。
川村:ベンチをつくるのに工夫した点は、座面に木曽ヒノキを使い、足は組み立てが簡易にできるコンクリートを使ったことです。結果的に防災ビルの景観になじむベンチができました。
加藤:犬山プロジェクトはビルという大きな建造物を扱っていて、まだ十分な結果はあまりついてきてはないと思いますが、学生がまちに関わり続けることで、今後何か大きく変わるきっかけがあるんじゃないかと、活動を見て感じています。

たくさんのことを学んだプロジェクト

加藤:有松プロジェクトに取り組んで、建物の構造や木造建築の基礎など、建築学科の学生として学ぶ部分がたくさんありました。「どうやってまちを良くしていくか」ということを考えることができたのも、大きかったと思います。建物だけを見るのではなく、僕たちは建築の結果として、まちも含めて良くしていくことを考えながら、プロジェクトを進めてきました。
小島:犬山のプロジェクトでは、現地に何度も足を運んで、アンケート調査をしたりベンチを置かせてもらったりと、フィールドワークができたことはすごく勉強になりました。
川村:犬山では正直に言うと、現実を思い知らされた部分もありました。大学にいると自分のデザインは自己満足で終わりますが、地元の人の意見を聞くとなると、自分の持っている案を出せなかったり、チーム全体で案がまとまらなくて混乱したりするんですが、地元のことを知ったうえで、建築を通して何ができるかを考えてきたことは、自分の中で大きかったと思います。
川端:犬山という観光客が何十万人と訪れる場所であっても、すぐ近くに人気(ひとけ)ない建物があるというのが、不思議だったんですけど、実際にそういう防災ビルが全国的にある現実を知って、逆にこれを有効活用することで、地方都市の可能性が広がるんじゃないかということも感じました。

建築分野での地域連携の意義とは?

加藤:学校の中にいると今社会で起きている問題がなんなのかっていうのが分かりづらいところがありますが、地域連携のプロジェクトに学生として参加して、その問題を把握するところから提案までの一連の流れを経験できたのは大きかったです。
また、学生が入れ替わっても活動は下の代に受け継いで、長く継続的に地域と関わっていけるのはメリットだと思います。学生は住民同士をつなぐ存在にもなれるんじゃないかとも思いました。
小島:まちを変えていくのは、若者と、よそ者と、バカ者ってよく言われるんですけど、私たちはよそ者だけど、積極的にまちを変えていこうって動いていて、それがまちの人にもっと派生していったら、私たちがよそ者としてやっている意味はあるんじゃないかって思っています。
川端:僕たちが対象とするのは基本的に賑わいのない場所に賑わいをつくるようなことで、そういうところに若い力があって、時間もある学生が関わることで、まちに活力を与える存在になれると思います。
学生側としては、学校にいるだけだと空想と戦っているようで全然実感が沸かないんですけど、社会に出ると「これはだめ」「あれは許可を取らないといけない」といった制約もあって、そういう厳しさを経験できるのは貴重でした。
川村:都市計画とかって、お金があってプロに頼めばいいものができるんだと思いますが、学生は時間を惜しみなく使えて、お金とか利益とか関係ないところで、まちをよくするために熱中できるっていうのが、いいところなんだと思います。